地価上昇が支えた税収の過去最高更新——2024年度、不動産関連税収は約16兆4,000億円に

2024年度の不動産関連税収が約16兆4,000億円と、過去最高を記録した。これは、地価の上昇と取引の活発化が財政面にも明確に反映された結果といえる。
本稿では、この背景と今後の展望について専門的な視点から考察する。
■ 税収構成とその増加要因
今回の増収を支えたのは、主に固定資産税、不動産取得税、登録免許税などの主要税目である。特に、都市部での地価上昇が固定資産税収の押し上げ要因となった。
国土交通省の地価調査によると、全国平均地価は2年連続で上昇。東京都心部では再開発案件が相次ぎ、商業地の評価額が顕著に上昇した。これにより、地方自治体の財源にも好影響が及んでいる。
■ 政策的含意と今後の課題
税収の増加は一見すると好材料だが、政策的には慎重な視点が必要だ。
地価上昇が続くことで、住宅価格が高止まりし、若年層・子育て世代の住宅取得負担が拡大している。加えて、相続税評価額の上昇が資産承継にも影響を与えつつある。
こうした中、政府には税制の公平性と市場安定性の両立が求められる。固定資産税評価の見直しや住宅ローン減税制度の再構築など、より持続的な制度設計が必要だ。
■ 総括:税収増の陰に潜む構造変化
今回の税収増は、単なる景気回復の反映ではなく、不動産市場構造の変化を象徴する現象といえる。
地価の上昇は、資産価値の拡大を通じて経済を押し上げる一方で、格差の拡大や地域バランスの崩れといった課題を内包している。
今後は、地価と税制の関係を中長期的な視点で捉え、国・自治体・民間が連携して持続可能な市場形成を目指すことが求められよう。
株式会社ファンハウス 代表 國井義博

