大規模地震・火災・設備事故に備える

― ビルオーナーとテナントが負う法的責任と実務対応 ―
日本では、震災のたびに建築・防災に関する法規制が強化されてきました。
単なる「努力義務」ではなく、所有者・管理者の法的責任が問われる時代です。
1.耐震性リスク ― “想定外”は免責にならない
1981年6月の建築基準法改正による新耐震基準以降も、
- 阪神・淡路大震災
- 新潟県中越地震
- 東日本大震災
- 熊本地震
- 能登半島地震
といった大規模地震を契機に、耐震基準や運用は強化され続けています。
■ 2019年改正:ブロック塀も対象に
2019年の耐震改修促進法改正では、大阪北部地震や熊本地震でのブロック塀倒壊事故を受け、
建築物に付属する組積造の塀が「通行障害建築物」に追加されました。
つまり、
建物本体だけでなく、付属構造物も責任対象
ということです。
■ 判例:未曽有の震災でも責任は否定されない
神戸地裁平成11年9月20日判決では、
「未曽有の大震災だから」という理由だけで土地工作物責任は免責されないと判断されました。
これはビルオーナーにとって極めて重要な示唆です。
2.既存不適格建築物の潜在リスク
旧耐震建物や既存不適格建築物は、
- 耐震強度不足
- 避難経路の不備
- 延焼防止機能の弱さ
といった問題を抱えているケースが少なくありません。
法的には“違法ではない”としても、
事故が起これば責任は問われる可能性があるという点を忘れてはなりません。
3.火災対策 ― 防火管理義務の重さ
一定規模以上の建築物では、
- 防火管理者の選任
- 消防計画の策定
- 消防設備の設置・点検
- 危険物管理
などが義務付けられています。
ホテル火災事件では、
最高裁平成6年11月25日判決において、
ホテル経営者の防火管理上の注意義務違反が認定されました。
「知らなかった」「業者任せだった」では通用しない。
これが実務上の教訓です。
4.設備機器トラブルと損害賠償
ビル管理において近年増えているのが、設備事故に伴う賠償問題です。
例:
- 停電 → サーバーダウン → テナントの営業損失
- エレベーター制御不能 → 人身事故
- 空調停止 → 医療・精密機器の損傷
この場合、
- 土地工作物責任
- 不法行為責任
- 契約上の債務不履行責任
が複合的に問題となります。
特にIT依存度の高い企業テナントでは、
停電数時間で数千万円規模の損害が発生するケースもあります。
5.ビルオーナーが取るべき実務対応
✔ 耐震診断の実施(必要に応じ改修)
✔ 付属構造物(塀・看板・外装材)の点検
✔ 消防設備の定期法定点検
✔ 設備機器の計画更新(耐用年数内)
✔ 緊急時対応マニュアルの整備
✔ テナントへの事前説明
ポイントは、
「事故後の責任回避」ではなく
「事故前の説明責任」
です。
6.テナント側の備えも重要
テナントもまた受け身ではいられません。
- 非常用電源の確保
- データバックアップの分散化
- 事業継続計画(BCP)の策定
- 保険の見直し
ビルとテナントは運命共同体です。
まとめ
大規模災害が起こるたびに、法制度は強化され、判例も積み重なっています。
今後も地震リスクが高い日本においては、
「古いから仕方ない」
「大地震だから不可抗力」
という考え方は通用しにくくなっています。
ビルオーナー・管理会社・テナントがそれぞれの立場で最善の備えを行うことが、
結果的に大きな損害と責任追及を防ぐことにつながります。
多くの損害と責任を回避できる可能性を見直してはいかがでしょうか。
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